自分の遺体を大学の医学部や歯学部に無償で提供するのが献体です。学生の解剖学実習のほか、医師の技術向上のための解剖で用いられることもあります。遺骨が遺族の元に戻ってくるまで1~2年ほどかかりますが、遺体の引き渡し前に葬儀を営むことは可能です。
希望者は年々増えていて、大学などで作る篤志解剖全国連合会の集計では、献体登録をしている人は昨年度末で約28万8,000人です。一方、解剖に必要な遺体は年間3,500~4,000体程度なので、新たな登録を制限している大学もあります。医療が進歩し、命を救ってくれた医療に恩返しをしたいと思う人が増え、葬儀への関心が薄れるなど死生観が変化したといった背景が考えられます。大学の費用で火葬までするので、家族にまで負担をかけたくないという思いやりもあるのかもしれません。
(2019年1月10日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)