文部科学省の調査によれば、大学で理工学系を専攻する女性の比率は15%で、大学全体の45%に比べて低率です。経済協力開発機構(OECD)が実施した15歳の生徒を対象にした学習到達度を測る調査によれば、日本の女子生徒の科学と数学の学力は、国際平均より高くなっています。しかし、女性が理工系に進まない理由として、模範や手本となるような身近なロールモデルの不在があげられます。研究者の女性比率は少なく、総務省の2018年の調査によれば、研究者全体のうち16%にとどまっています。1998年の10%からは増えていますが、英国は38%、米国は33%、ドイツは28%、韓国は20%の諸外国に比べると低いままです。
大学卒業後の仕事を巡る環境も学部選択に影響を与えています。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、第1子出産時に女性の約2人に1人が離職しています。出産や育児で仕事を続けるのが難しくなることを想定し、女性は再就職に備えて資格を重視する傾向があり、大学進学時に看護学や薬学などの志望者が多くなります。文部科学省は、模範となる女性研究者の割合を増やすため、出産や育児と研究を両立できる仕組み作りや、女性リーダーの育成などに取り組む大学を支援しています。出産や育児で研究を中断した研究者を対象に、復帰するための研究奨励金を支給するなど制度の充実を図っています。
(2019年7月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)