日本移植学会によると、肝硬変や肝がんなどで肝臓が機能しないため、肝移植が必要な患者は推計で年約2200人いるとされています。約400人は脳死移植を希望して待機していますが、2009年法改正で増加したものの年40例前後で、ほとんどの患者は移植を受けられず、1年以内に亡くなっています。生体肝移植は国内で1989年に初めて実施されました。治療成績も向上し、2004年にはほぼ全ての肝疾患で保険適用となり、2005年には年566例に達して肝不全の患者を救ってきました。
しかしながら、生体肝移植を2000例を手がけた第一人者である京都大学病院の田中紘一教授が、 同年に一線から退くと減少に転じました。2013年は369例とピ-クだった2005年の3分の2で、実施施設も減ってきています。生体肝移植は健康な提供者にメスを入れて肝臓を摘出するといった倫理的な問題があります。米国などは脳死からの肝移植で対応しており、日本においても脳死移植を増やして対応すべきと思われます。
(2015年7月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)