いつの時代も、技術革新は私たちの生活を大きく変化させてきました。従来は、ユーザー側に専門知識や学習データの用意などがないとAIを活用できませんでした。しかし、生成AIは大量のデータを事前学習しているため、誰もが簡単に利用でき、高度で幅広いアウトプットが可能になりました。現在多くの企業も生成AIを活用して、生産性向上を図ろうと、様々な試行実験を展開しています。将来的には、私たちの生活にも様々な恩恵をもたらすと思われます。
研究開発や営業、カスタマーサポートから、経理、人事、法務などのバックオフィス業務の効率化が期待されています。消費者の利便性は向上し、企業も顧客のニーズをより把握しやすくなります。病院では、生成AIが患者対応を代替することも考えられます。医師の生産性が上がるだけでなく、生成AIの丁寧な声掛けによって、患者の満足度も上がるかもしれません。
生成AIは、欧米やインド、シンガポールなどを中心に世界でも活用が進んでおり、市場規模は2027年に1,210億ドルまで拡大するとの試算がされています。日本は、生成AI開発に厳格な法規制はなく、海外の法規制との整合性は課題となりますが、現状の開発しやすい環境を生かせば、新しいイノベーションや競争力のあるベンチャー企業が生まれる可能性があります。
生成AIは、脅威ではなく機会と捉えるべきです。インターネットを仕事で使うことが当たり前になったように、生成AIもどう使いこなすかが前提のツールになります。生成AIによってアウトプットの工程を効率化できるぶん、求められるスキルは変わってきます。今後はゴール設定や課題解決の方法を設計する力、意思決定力などが、より大切になるのではないかと思われます。
(2023年10月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)