生殖医療を考える―Ⅵ

生殖医療の特殊性―①

 生殖医療は人の生命の誕生にかかわる医療であることから、通常の臨床医学とは本質的に異なった倫理観が必要となる。それは生殖医療がすでに存在する個人を対象とするのではなく、生命の誕生そのものを対象とするからである。医師が患者に医療行為を施すとき、「患者のために」とか「患者は待っていられない」という言葉がよく使われる。臨床医学では、医師が患者の求めに応じてその時代における最高水準の医療を提供できる。しかしながら、生殖医療においてその治療の対象は、クライエントと生まれてくる子を含む家族である。さらに第三者の身体や身体の一部が医療手段として利用されることになれば、その提供者と家族も対象となり、患者と医師という一対一の関係だけでは完結することができない特殊性を有しているからである。
(吉村 やすのり)

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