企業や大学において産業医などがモデルナ社製の新型コロナウイルスワクチンを接種することになりました。産業医が常駐する従業員1,000人以上の事業所は全国で1,900カ所あります。常駐しないものの産業医がいる事業所だと14万カ所にのぼります。社員向けに任意でインフルエンザワクチンを接種しているところも多く、円滑な運用を期待できます。
産業医は、労働安全衛生法に基づいて従業員の健康管理のために企業が選任する医師のことです。養成研修・講習を修了した医師は、全国で9万人ほどいます。推計で3万人程度が実働しています。従業員50人以上の事業所では選任が義務付けられており、それ未満の規模では努力義務になります。従業員1,000人以上や500人以上で危険な業務を担う事業所は、専属の産業医を配置する義務があり、さらに3,000人超になると2人以上が必要になります。従業員10人以上の民間事業所で産業医を選任している割合は3割ほどになっています。
健康診断や面接指導、健康教育といった職務が主な内容です。季節性のインフルエンザワクチンを任意で接種する職場もあります。近年はメンタルヘルス対策の役割を強化してきています。2015年には従業員のストレスチェック制度を企業に義務化しています。社員を休ませたり、働き方を改めたりするように会社へ勧告でき、会社側は産業医の判断を尊重しなければなりません。
(2021年6月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)