産業医は、従業員50人以上の事業所で選任が義務付けられており、従業員の健康管理を担っています。健康診断の実施やその後の指導、長時間労働者への面接などが主な役割です。企業内診療所の担当医を兼ねる場合もあります。産業医が専属で常勤するのは大企業などでは一部にみられますが、診療所や病院に勤める医師が本業の傍ら請け負う場合が多くいなっています。
産業医制度は、1972年に労働安全衛生法の施行に伴い始まりました。もともとは、工場から出る有害物質の管理や結核などの集団感染防止を目的として設置された工場医でした。その後、従業員の健康問題は多様化し、2000年代以降は過労による自殺などが社会問題となり、企業の産業医にとってメンタルヘルスのケアも重要になってきました。心身両面の問題に対応できるよう、医師の専門は内科か精神科が中心になってきています。近年、産業医に求められる役割は変化してきています。メンタルヘルスの不調や生活習慣病をいかに防ぐか、闘病しながら働き続けられる職場環境など、手厚い態勢でこれらに対処する企業が必要となります。
(2016年4月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)