日本での賃金や昇進における男女格差は改善されていません。OECDによれば、男性の賃金の中央値を100とした時の女性の値は、2021年時点で日本が77.9です。内閣府によれば、民間企業の女性管理職比率(課長相当職)は、2021年時点で12.4%で、いずれも先進国最低レベルです。格差は経営トップ層にも出ています。
企業統治助言会社のプロネッドによれば、東証プライム上場企業の取締役に占める女性の割合は、1割を超えるものの、大半は社外取締役の起用によるもので、内部登用の女性の取締役は1.5%に過ぎません。内部昇格で取締役になれる女性は極端に少数です。
女性が育児などを過度に担ってキャリアを断念する場合だけでなく、そうした制約がなくとも昇進の壁に阻まれて、将来の役員候補となるべき女性が次々に脱落されている構図があります。その結果、企業内で男女に賃金格差が生まれます。非正規雇用における女性の割合も高まります。非正規から経営トップ層まで、あらゆる階層に不平等の構図が横たわっています。
男性は50代前半で半数近くが管理職を経験するのに、同世代の女性はその約10分の1しか管理職を経験していません。男性には、男性の先輩を見習い、男性の先輩に引っ張り上げられてキャリアを形成するタテ社会の企業文化があります。一方、女性では、女性管理職が女性の後輩を引っ張り上げるタテ社会ができにくくなっています。評価し登用するのが男性だと、男性社会に都合の良い女性が登用される可能性があり、女性同士の連帯が生まれにくい状況があります。いわゆるオールド・ボーイズ・ネットワークの存在です。
中高年女性はポテンシャルがあります。政府は、昨年男女の賃金格差の公表を義務づけています。常時雇用301人以上の企業が対象で、正規・非正規それぞれの賃金格差の開示を求めています。しかし、開示するだけでは賃金格差は埋まりません。格差の要因である女性管理職や専門職の比率の引き上げ策が必要になります。
(2023年3月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)