厚生労働省の人口動態統計によれば、2016年以降の出生数は、年平均3.5%減で推移しています。さらに2020年の婚姻件数は、前年比12.3%減の52万5,490件と戦後最少を更新しました。若者の経済的貧困が、結婚や出産をひるむ要素になっています。今の子育て世帯への経済的支援と政策理念が与える安心感は、将来の子育て世帯を増やすことにつながります。
政府は、2019年から幼児教育の無償化に動き出しており、子ども政策を一元的に進める際の司令塔となるこども家庭庁の2023年度発足も目指しています。少子化対策は国の最大の課題です。子育て関連という枠内でのやりくりではなく、コロナ対策のように集中して予算を投じることも必要です。
合計特殊出生率の改善のためには、結婚や出産、子育てへの経済的な後押しのほか、男性の育児・家事などの家庭進出が不可欠です。改正育児・介護休業法が4月から施行され、産後パパ育休の新設や育休の分割取得、企業による意向確認の義務化などが順次スタートします。共働き社員が増えていますが、未だに家事育児・介護への性別役割分担意識が根強く残っています。多様な働き方を互いに尊重する企業風土を醸成していくことが大切です。
(2022年1月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)