男性DV被害者の増加

 DV防止法は男女を対象にしています。しかし女性の方が被害者が多く、相談体制も女性を想定してつくられてきたため、男性の被害についてはあまり注目されてきませんでした。男性自身も男性が被害に遭うはずがないと考えたり、恥ずかしくて言えないと相談をためらったりする傾向があります。

 警察庁への相談に占める男性の割合は年々増えており、2023年は27.9%に達しています。男性の5人に1人が配偶者から暴力を受けた経験があるという内閣府の調査結果もあります。男性DV被害者の支援団体によれば、殴る、蹴るなど命の危険を感じる身体的暴力も少なくないとされています。無視する、寝かせない、交友関係を断たせるといった行動や、給料を搾取する経済的DVも目立ちます。

 都道府県や市町村がDV相談支援センターを設置し、原則相談に乗っています。しかし、女性相談支援センターなど女性向けと思わせる名称の相談所も多くなっています。相談員側が、被害者は女性、男性は加害者という固定観念を持っている場合もあるため、こうしたバイアスを無くした支援が必要です。また男性相談の日時を限定したり、対面相談を受けなかったりなど、相談の機会が均等でないところもあります。

 朝日新聞の都道府県が設置する相談機関への調査によれば、2023年度に相談を受けたのべ件数は、約30分の1にとどまっています。相談を受ける曜日や時間について、女性に比べて受付時間が短かったり、曜日を限定したりするなど、男女で違いがある自治体は14もあります。対面の相談は受け付けず、電話やオンラインでしか相談を受け付けていない自治体も11もあります。一時避難先として都道府県が設置している公的シェルターは、42の自治体が女性専用でした。

(2024年11月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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