優秀な留学生の獲得に向け、文部科学省は大学の定員規制を緩和する方針です。文部科学省は定員規制を緩和する条件として、留学生の授業料引き上げといった対策のほか、研究成果の不正流用や技術流出防止といった経済安全保障上の対策をとること、過去3年で定員充足率が9割以上、留学生の所在不明といった問題が起きないような在籍管理の徹底、留学生の出身地が偏らない対策の実施などを求めています。
優秀な学生を自国に迎え入れようとする各国の競争は激しくなっています。国際機関の調査によれば、世界の留学生総数は2024年に690万人です。グローバル化が進む中、約20年で4倍に増加しています。受け入れ先として首位の米国のシェアは低下傾向にあり、カナダのほかアジアでも中国、韓国などが存在感を高めています。日本のシェアは2%で低水準で推移してきましたが、米トランプ政権によるハーバード大学の留学生受け入れ資格停止などを受け、留学先の多様化がさらに進む可能性もあります。
大学側にとっては、優秀な留学生に選ばれるような改革が急務となります。英語による授業だけで学位がとれるのは45大学・93学部にとどまっています。東京大学が定員100人の半数を留学生とする新課程であるカレッジ・オブ・デザインを開設し、全ての授業を英語で行う方針を示すなど、各大学はキャンパスの国際化を急いでいます。留学生の定着や卒業後の活躍に向けた日本語教育の充実も求められます。
(2025年7月26日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)