100歳以上を百寿者、105歳以上を超百寿者、110歳以上をスーパーセンチナリアンと呼びます。2020年の国勢調査の結果によれば、百寿者は約8万人いますが、超百寿者は6,515人と百寿者の8.2%まで減り、さらにスーパーセンチナリアンは141人で超百寿者の中の僅か2.2%です。105歳超えに大きな壁があります。スーパーセンチナリアンの最大の特徴は、100歳時点でも日常生活の自立が保たれており、百寿者の中でも特に健康寿命が長いことにあります。
究極の健康長寿モデルともいえるスーパーセンチナリアンの医学的特徴は3つあります。1つは認知機能が保たれていることです。100~104歳で亡くなった人と105~119歳で亡くなった人、110歳以上まで長生きした人の、100歳時点での認知機能を比べると、スーパーセンチナリアンの認知機能が最も高くなっています。高齢になっても認知機能が保たれている人ほど、長生きの可能性が高くなっています。2つ目は、心臓血管病になりにくいことです。元々百寿者は動脈硬化が少ないと言われていました。心臓や血管の老化が特に遅いのが特徴です。3つ目はフレイルになるのが遅いことです。超百寿者やスーパーセンチナリアンは、こうした状態になる以前の健康寿命をより長く保っています。
寿命に対する遺伝の影響は25%ほどで、残りは環境によるもと見られており、再現性をもって長寿に関係すると確認されている遺伝子は実は少ないとされています。現在分かっているのは、百寿者にはAPOE4という遺伝子保有している人は少ないとされています。APOE4はアルツハイマー病のリスクが高まる遺伝子として知られています。
身体活動が多い人は長生きです。85歳以上で元気な人達は7割ぐらいが散歩を普段していて、体操やストレッチなどをする人もいます。何も運動をしていないに比べ、意識して運動をしているほど死亡率は低下しています。食事の面では、ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)の摂取量が多い人ほど、下肢の運動機能が保たれています。DHAは脳や神経組織の機能を高める働きがある成分として、EPAは血栓をできにくくする血液サラサラ成分として知られています。鯖や鰯などの青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸です。
たんぱく質の適度な摂取も重要です。85歳以上の高齢者からスーパーセンチナリアンまでの幅広い年齢層の調査で、高齢になっても血中のアルブミン濃度が高い人の方が長生きするとされています。高齢でアルブミン濃度が低下すると、フレイルになりやすく死亡率も高くなります。高齢になれば、筋肉量を維持するために肉や魚、植物性たんぱく質を食事できちんと取って、血中のアルブミンを高く保った方が健康寿命を期待できます。
(2022年4月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)