直美による美容医療のトラブルの増加

 美容医療のトラブルが相次ぐ一方、医療界は、若手医師の美容医療への流出という問題に直面しています。今や、クリニックに勤務する美容外科医の半数は、20~30代の医師です。これらは直美(ちょくび)と呼ばれています。直美とは、医学部を卒業し、2年間の臨床研修を終えて間もない駆け出しの医師が、美容医療に進むことを指します。

 状況が変わり始めたのは20年程前です。手軽に二重まぶたにできるようになり、レーザー脱毛や美容成分の注射といった施術が登場し、外科の経験がない医師も参入しやすくなりました。プチ整形という言葉も広がり、今ではSNSで美容医療を受けたことを明かす人も増えています。

 十分な医療経験もなく、美容外科を志す直美の急増は、膨れ上がる美容医療の需要が背景にあります。その一方で、若手医師が自由診療の美容医療に引きつけられる事情もあります。雇われている医師の多くに年2千万円以上のお金が支払われています。皮肉にも、医学生の定員増加が直美につながっています。

 後遺症や合併症に対する対応が不十分な美容クリニックの存在は、厚生労働省の調査でも明らかとなっています。施術トラブルに対応するためのマニュアルや研修がないと回答した美容クリニックが3割を超えています。契約上のトラブルも多く報告され、契約解除や返金に応じてもらえなかったり、収入に見合わない医療ローンを組まされたりしています。また、安い価格の広告を出し、実際は医師でもないカウンセラーなどが、言葉巧みに利用者1人あたりの単価を上げているケースが多くなっています。

 施術や契約に関する美容医療のトラブル増加を受け、厚生労働省は安全管理などに関する年1回の報告を美容医療界に求める報告書をまとめています。病名がつかないからカルテが書けないといった逃げ道を作らせないよう、厚生労働省では美容医療独自のカルテの書式を示すことなども含め、対応を検討中です。

(2024年12月1日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です