看護師や介護士、保育士は、低賃金や過酷な労働環境などから深刻な人手不足が続いています。少子高齢化も重なり、介護職は、2025年度に2019年度比で32万人、2040年度には69万人が不足するされています。保育は、2024年度末までに2.5万人、看護は2025年に7万人が足りなくなる見通しです。
介護や保育の職に就く人の平均月収は、全産業平均に比べ5万~6万円ほど低いのが現状です。看護師の平均月収は全産業平均より高いのですが、早朝や深夜など厳しい勤務条件で働く人も多く、勤務実態に見合った処遇改善が必要です。2009年度以降でみると、介護は合計で月額7万5,000円分を上乗せしています。それでも介護、保育ともに他の産業と比べて賃金水準は低く、欧米と比べても見劣りしています。
政府は、人手不足の解消に向けて介護分野などで外交人労働者の在留資格の拡充にも動きました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大もあって、人材はいまだ足りていません。受け入れが本格的に再開しても、処遇が悪ければ周辺の他国に人材を取られかねません。
介護職などの処遇改善に異論は少ないのですが、課題は賃上げの持続性です。給付金に頼れば、常に財源が壁になり、単発の策にとどまってしまいます。国民からの介護保険料が原資となる介護分野の場合、処遇改善のためには保険料の引き上げが避けられず、国民の負担増につながります。サービスの質や需要の量に応じて、働く人の処遇も事業者側が柔軟に設定できる規制改革が必要です。、企業が、国からの補助金や収益を確実に職員の処遇改善に充てる仕組み作りも欠かせません。
(2021年11月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)