日本産婦人科学会は、7日受精卵の染色体を幅広く調べ、正常なものだけを子宮に戻す「着床前スクリ-ニング」に関する公開シンポジウムを東京都内で開催いたしました。産婦人科医や障害者団体の関係者らが多数参加し、研究計画についてさまざまな意見が寄せられました。
臨床研究では、着床前スクリ-ニングを行う人と行わない人を300人ずつ集め、流産を減らし、妊娠や出産の可能性を高められるかを検証することになっています。高齢出産になっても妊娠や出産を望む女性の増加が研究背景にあり、高齢化で受精後の染色体異常が増えると、不妊や流産が起きやすくなるとされています。シンポジウムでは、医療者側は女性にとって流産はつらく、着床前スクリ-ニングを受けられるようにすべきだと主張します。一方、先天的な障害をもつ患者団体は、自分たちが振り分けの対象になり、命の選別につながる技術であるとしています。
いずれにしても、こうした臨床研究は医学的に検証する上で大切ですが、同時に障害があっても心健やかに生活できる社会づくりがより大切となります。こうした臨床研究の実施とともに、障害者が積極的に社会に関わることができるような制度づくりが必要となります。
(2015年2月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)