着床前遺伝学的検査(PGT-A)は、染色体数の異常のない胚を移植するため、移植胚あたりの妊娠率が向上します。また流産の6~7割の原因は染色体異常であるため、流産率が低下することになります。検査のための費用はかかりますが、正常胚だけを戻すため、胚移植の回数が減り、結果的に費用は減ると思われます。正常胚より移植していくため、出産までの期間が短縮するケースが多くなってきます。
課題としては、検査による胚の損傷は否定できません。また解析の精度が100%ではなく、検査を実施しても、移植すべきか迷う場合があります。代表例が染色体に異常がある細胞と正常な細胞が混ざったモザイクが見つかった時です。医療機関によって移植の可否に関する判断が割れるケースが想定されます。全国の検査件数が増えれば、モザイクなどの判定に使える科学的根拠もそろってきます。現時点では正常胚が使用されない可能性も否定できませんが、今後妊娠や出産率をさらに高めるための知見も得られるかもしれません。
(2022年1月18日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)