米シンクタンクであるランド研究所の推計によれば、日本の睡眠不足が引き起こす経済損失額は、年間15兆円にも達します。国内総生産(GDP)に換算した損失の割合は2.92%で、調査対象の5カ国でワースト1位を記録しています。OECDの2021年版調査によれば、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、加盟国のうち30カ国で最下位です。全体平均の8時間24分とほぼ1時間もの差があります。厚生労働省が2020年に公表したデータでも、20代以上で6時間未満の睡眠だった人が39%でした。
これまでオフィスで寝不足を美徳のように語る光景は、今も珍しくありません。しかし、労働力人口が減りゆく中、一人ひとりの生産性の向上が求められる時代です。長時間労働に支えられてきたビジネスモデルを転換できない企業は、非効率経営の烙印を押されることになってしまいます。良い眠りは、思考の整理や記憶の定着を助け、想定外の事態にも対応できる一流のリーダーの条件である知力と体力を下支えするとされています。
(2021年9月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)