朝日新聞らの調査によれば、日本の大学の研究力が低下していると考える学長が7割にのぼっています。低下の理由については、7割の大学が基盤的経費の減少や教員の多忙化を挙げています。低下とした学長に理由を尋ねたところ、運営費交付金や私学助成などの基盤的経費の減少と教員の多忙化が72%で、最多でした。若手研究者の不安定雇用が43%と続いています。
職員の人件費などをまかなう国立大学への運営費交付金は、今年度から改革状況の評価に応じて傾斜配分する枠が大幅に拡大されています。2020年度予算案では、約1兆800億円の運営費交付金のうち、この枠には約1,100億円が計上され、今年度よりも約100億円増加しています。このうち850億円は、共通指標の達成度に応じて支払われますが、大学による配分率に差が出てしまいます。しかし、人件費や基礎的研究経費への影響が大きく、結果的に教育・研究力が低下してしまいます。
研究費の減少により競争的資金の獲得を目指すため、申請書や実績報告書の作成などの業務に費やす時間が増加します。また、入試改革、きめ細かな学修・就職支援などの課題に追われ、教員1人当たりの仕事量が増加しています。仕事量の増加により、研究力は低下しています。優れた若手研究者が、腰を据えて自由な発想で、挑戦的研究に取り組める環境を整備することが大切です。
(2020年2月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)