磁気刺激によるうつ病の治療

 脳を磁気によって刺激する反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)が、うつ病の治療に使用されています。rTMS療法は、脳卒中の後遺症で手足が麻痺した患者へのリハビリ効果を高めることにも利用されています。rTMSは、20179月に厚生労働省が医療機器として薬事承認しています。抗うつ剤による薬物療法の効果がなく、長期間苦しむ患者の治療への適用が期待されています。
 うつ病患者へのrTMS療法は、磁場をパルス状に連続発生させるコイル装置を患者の頭部に近づけます。磁場の働きで生じた渦電流が頭蓋骨の内部まで到達して脳神経細胞に働きかけます。うつ病患者の多くは、脳の左前方領域の機能が低下し、神経細胞間で情報を伝えるドーパミンなどの神経伝達物質の分泌が弱くなっています。磁場によって脳を繰り返し刺激することで、こうした神経の働きが改善されます。治療期間は通常4週間から6週間です。1秒あたり10回のパルス刺激を1140分程度、週5日実施します。患者は入院または通院しながら治療を受けます。

(2017年11月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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