2008年をピークに、日本の総人口は急降下を始めました。現在約1億2,500万人の人口は、2100年には6,000万人を下回り、半分以下となる見込みです。この人口減少はひとえに少子化に起因しています。人口増加を前提とした現行の社会保障制度は、既に限界を迎えています。社会保障に特効薬はありませんが、失われた平成の30年間を総括し、昭和的価値観から脱却しなければ、復活の処方箋はありません。高度経済成長期の幻想を追い求め続けた平成が終わり、令和の時代が幕を開けた今、我々は新たな日本の未来を描くべきです。
少子化は日本だけの現象ではありません。欧米先進国に共通しており、さらに新興工業国にも拡大しつつあります。産業文明は、経済成長、人口増加、長寿をもたらしましたが、化石燃料の有限性、環境汚染・破壊が人々の意識を変え、1970年代には少子化が始まりました。持続可能な開発が提唱される頃から、出生率が回復した国もあります。しかし日本など一部の国では、相変わらず少子化は深刻です。これらの国に共通するのは女性の地位が低いことです。核家族のもとで、男女が同等に社会に進出し、家事、育児、介護を分担するジェンダー平等社会を実現することこそ、出生率回復の鍵であると思われます。
多様なライフ・スタイルを前提とする、人口水準や社会の仕組みを考えていくことが求められます。それは、決して高度経済成長期のようなモデルではありません。21世紀を通じて避けられない人口減少の中においても、快適で安定した社会、持続可能で生産性の高い社会、都市居住からの脱出など、人口規模に見合う社会の豊かさを享受すべきです。長寿化にあわせて、人生区分における高齢者の年齢を引き上げる必要もあります。
(吉村 やすのり)