若者・子育て世代の将来の所得に関する懸念は、増大する社会保障負担にあります。高齢者人口は2040年頃にピークに達した後に減少していきますが、現役世代の人口が継続的に減ることで、子どもと高齢者を扶養する現役世代の人口が相対的に減ることになります。20~64歳人口とそれ以外人口の比は、2030年代から上昇し続けることが予想されます。つまり1人の現役世代が、より多くの人口を扶養せねばならないことを意味しています。
現在のような社会保障制度の給付と負担の構造を前提とする限り、現役世代の負担は今後上昇していくと考えられます。経済成長により、可処分所得の減少を抑えることにも限界があります。社会保障改革により、社会保障負担を減少させることが必要になってきます。
若者・子育て世代の所得増加を持続可能なものにするには、高齢者への社会保障給付を若者世代に依存しない形に見直すことが必要になります。そのため高齢者向け給付の見直しと高齢者の負担増の両方が求められます。しかし、社会保障給付の削減はなかなか困難であり、構造的な財政赤字を解消するには、基幹税の増税が必要となってきます。
消費税であれ所得税であれ、税率が上昇すると租税回避の誘因を高めて、経済活動をゆがめる影響が大きくなってしまいます。課税ベースが広く、必要な税収を得るための税率が低いことが条件になります。必要な支出のための財源を確保できる税率などを決めていくことが必要になります。税・社会保障負担一体で財源問題を考えることが大切です。
(2023年6月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)