社外取締役は、企業統治を強化するための鍵を握っています。企業の意思決定の最高機関である取締役会に参加し、社外の視点や専門知識を生かして経営に関する助言をします。経営幹部の選定や解職に関与することもあります。日本企業ではかつて社内出身者ばかりが取締役に就いていました。社内事情に詳しいという利点はありますが、取締役になっても反対意見を述べにくく、企業統治が機能しない状態になりかねません。そこで空気を読まずに発言してくれる外部の風を取り入れようと考えたわけです。
2019年12月に成立した改正会社法では、社外取締役の設置が義務付けられました。東証一部上場企業に限れば、2019年8月時点で93%が2人以上の独立社外取締役を置いています。一方、ベンチャー企業では非上場でも、社外取締役を置くケースがみられます。若い起業家が投資を巡る判断や人脈を期待して、助言者として招いているようです。
他社の役員経験者や学者、弁護士などが就くことが多いのですが、一部の人に就任要請が偏りがちです。複数の企業の社外取締役になる人も多くなっています。女性や外国人の比率が低く、多様性の確保も課題です。
(2020年2月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)