朝日新聞社や福島大学の調査によれば、東京電力福島第一原発事故で避難した住民は、38%が事故前に暮らしていた地域に「もう帰れないと思う」と答えています。5年間に及ぶ避難生活で、帰還への希望が薄れている実態が浮き彫りになっています。避難中の人に帰還の意向を聞くと、「元のまちのようになれば帰りたい」が41%で最も多くを占めています。「元のまちに戻らないから帰りたくない」が25%で続いています。今の気持ちを聞いたところ、「頑張ろうと思う」と答えた人が2年前の調査の55%から32%に減っています。「気力を失っている」「怒りが収まらない」はともに18%で、いずれも前回より増えています。
「避難者であると明かせない」、「新居を建てても落ち着かない」と答える多く、生きづらさや孤独感が強く感じられます。原発被災者に孤立感が広がっているのは、彼らの考え方と、避難指示解除の時期などの政策とのミスマッチに原因があるとも思われます。被災者が置かれた状況への理解を広めることが大切です。被災者が避難先でも避難元でも安定した生活が送れるようにしなければなりません。避難先での住民の心無い一言も避難者を苦しめているように思います。
(2016年3月10日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)
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