東京都電力福島第一原発事故から4年がたち、大打撃を受けた福島県産農水産物の回復傾向がみられるようになっていますが、一度を生じた風評被害の克服は容易ではありません。水産物に関しては、2012年6月に始まった試験操業は、現在、福島第一原発の半径20キロなどを除く福島県沖を漁場としています。県の放射性セシウムの継続監視調査で国の規制値(1キロあたり100ベクレル)を大幅に下回り続けた魚種が対象で、それ以外は漁獲できないのがル-ルです。当初の対象は3種でしたが、現在は58種まで拡大しています。規制値を超えた検体も原発事故3ケ月後の11年6月は、全体の50%に上がっていましたが、今年2月には全検体が下回っています。放射能が問題なくても福島県産と聞けば避ける消費者が多いのも現実です。
消費者意識は、農畜産物の価格には影響が顕著に表れています。東京都中央卸売市場の販売価格は、全国2位の生産量を誇る福島産のモモが1キロあたり358円と全国平均より2割安く、肉用牛も同1685円と全国平均を300円も下回っています。さらに、昨年の福島県浜通り産コシヒカリの価格が、全国平均より2割以上低くなっています。全ての福島米の安全性は保障されているにもかかわらず、こうした風評被害は根強いものがあります。しかし、消費者がさらに安心できるよう、生産者側も従来以上にこまめに検査結果を発信することが必要になります。
(2015年3月12日 読売新聞)
(吉村 やすのり)