科学論文については、研究不正に加えて著者に相応しくない研究者の名前が掲載されるという疑惑もある。最近では国際的な共同研究が増えるにつれ、論文一本あたりの著者数は増える一方である。著者数が100人や1,000人を超えるような論文もできている。著者の資格がないのに名前を載せるのは「名誉著者」とか「ギフト著者」と呼ばれる。医学部では、教授はほとんど研究に関与していない状況であっても、last name (著者の最後)に名前を列ねることが多い。研究の指導的立場にある責任著者も複数名いる論文もある。研究によっては論文としてアクセプトされやすくするために、あえて実績のある科学者に執筆を依頼したり、名前を入れることを頼むこともある。
今回のSTAP細胞の論文においても、実績のある2人の研究者が責任著者になっている。またこれまでの研究論文では、互いの実績を増やすために名前を入れ合うことも行われている。科学者が研究所長とか教授になるためには、研究業績が全てであると言っても過言ではない。その際には研究の内容もさることながら、掲載論文のクオリティーのみならず論文数が大きく影響する。これは、正しく研究業績至上主義がもたらした弊害である。
(吉村 やすのり)