第三者を介する生殖補助医療について憶うこと―Ⅰ

 卵子提供や代理出産などの第三者がかかわる生殖補助医療は、多くの課題を包含しています。子どもを持ちたいという夫婦の切実な願いに生殖補助医療はどこまで応えていくべきなのでしょうか。こうした生殖補助医療は、自己決定権だけで実施出来ない状況もみられます。生まれてくる子どものためにも、最低限度の親子法などの法整備を含めた制度づくりを急ぐ必要があります。
 卵子提供に関する生殖補助医療に関しては、今年7月、無償ボランティアからの卵子提供をあっせん・仲介する民間団体(OD-NET)が、体外受精に成功したことを発表しています。そもそも、卵子提供を認めるか、その場合の条件は何か、日本には公的なル-ルも、それを裏付ける法律もありません。日本生殖補助医療標準化機構(JISART)では、厳しい倫理委員会の審議後、姉妹や友人など身近な人から提供を受け、出産するケ-スもみられています。しかし、ドナ-の不足からこれまで30名前後の子どもが誕生しているに過ぎません。
 日本では、第三者からの精子提供による人工授精(AID)が実施されるようになってすでに65年以上が経過しています。AIDにおいては、遺伝子上の親を知りたいと悩む子どもたちがおり、出自を知る権利が大きな問題となっています。こうした自然な気持ちにどう配慮するかが大きな焦点となっています。

(吉村 やすのり)

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