筋ジストロフィーに対する新しい治療薬

筋力が落ちる進行性の難病であるデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対し、核酸医薬というタイプの新薬が登場しています。DMDは、筋力が衰える筋ジストロフィーの一つで、さまざまなタイプがある筋ジストロフィーの中でも最も患者が多い病気です。しかし、希少疾患なので、日本では4千人と推定されています。男性に多く発症します。原因は筋肉の運動に必須であるジストロフィン遺伝子の異常によって起こります。これまでリハビリなどの対処療法のみでした。
新薬であるビルトラルセンは、遺伝子に働きかける核酸医薬というタイプの薬です。ジストロフィンを作るのを可能にするのが、エクソン・スキッピングという方法です。DMDの場合、たくさんあるエクソンのどこかが欠けていることが多く、この前後でエラーが起きて、たんぱく質が作れなくなっています。エクソン・スキッピングとは、薬を使って欠けている部分を読み飛ばすことにより、列が少し短くなるものの、ある程度機能が期待されるたんぱく質が作られるようになります。この薬は53番目のエクソンを読み飛ばすことで、影響が軽くできる人が対象となります。DMD全体の8%を占めています。
ジストロフィン遺伝子の欠損部位は、45~55番目に集中しています。ビルトラルセンは、対象者や効果が限定的ですが、新たな筋ジストロフィーの治療薬として期待されています。再び歩けるといった機能回復より、状態の維持や進行を遅らせるのに有効かもしれません。早いタイミングで治療を始めれば、効果はより高まる可能性があります。

(2020年7月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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