外資系企業は、成果が著しく低いとPIP(Performance Improvement Program)と呼ばれる業務改善計画を会社と社員が話し合って作ります。計画に基づいて行動し、結果が出なかった社員には、降格や退職勧奨が待ち受けることになります。
ジョブ型を導入しても形だけで、降格を避けがちだった日本企業も変わり始めています。組織人事コンサル大手のマーサージャパンによれば、PIPを導入する日本の主要企業の割合は、2024年に19%と2020年より7ポイント上昇しています。降格や退職勧奨を辞さない企業が2割いることになります。
降格は決してマイナスではありません。人の入れ替えによって組織は強くなり、降格した社員も別の場所で専門性など幅を広げるチャンスになります。仕事に挑戦するモチベーションが生まれます。PIPなどに基づき能力発揮が難しいと評価した場合は、降格(リチャージ)させます。研修プログラム受講や面接を経て再評価すれば、最短で1年後に再登用(リチャレンジ)します。
終身雇用、年功序列といった日本型雇用は、社員が安心して働けるという効用があった半面、組織の停滞を招いてきました。危機感を抱く企業は雇用慣行を破り始めています。多くの企業が新卒採用だけを重視するのをやめ、中途採用を増やしています。日本経済新聞の調査によると、中途採用比率上位50社の上場企業の増収率(中央値)は、下位50社の上場企業を11ポイント上回ります。これからは降格をためらわない人事制度によって、組織を強くする時期に来ています。成果を出した人を評価する環境が成長には欠かせません。
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(2025年2月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)