2018年の中国の全体の論文数は39万7,500なのに対し、米国は38万3,500で、中国の方がわずかに多くなっています。しかし、国際共著論文では、中国の10万6,900に対して、米国は17万4,200で米国が逆転しています。米国は、全論文に占める国際共著論文の割合が45%に達しており、様々な国の研究者との協力が米国の研究力を支えています。
2020年の中国の国際共著論文の38%が、米国の研究機関の研究者との連携です。米国の共著論文の26%も中国との連携で、国別で最も多くなっています。 両国の共同研究は、中国だけにメリットがあるわけではなく、米国の研究力や産業競争力の強さも支えています。しかし、米国の大学などで学ぶ中国人留学生は、2020年1月時点で36万8,800人と1年前より約2%減っています。2017年12月をピークに少しずつ減り始めています。留学生の減少は、米国がビザ発給を遅らせて留学生の排除に動いているのが一因です。
米大の2018年の理工系博士号取得者のうち、留学生は37%に上っています。留学生の中で中国人の割合は約4割と最多です。米国は中国などの外国人学生から恩恵を受けています。圧倒的な共著関係を持つ米中の論文ですが、中国の相手国に占める米国のシェアは、2015年の45%をピークに5年連続で減少しています。2020年は38%まで低下しており、代わりに欧州やアジア、ロシアなどとの共著が増えています。中国などの排除が続くと米国の大学は強さを維持できず、米国産業界の競争力は低下し、痛手を被ることになるかもしれません。
(2020年9月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)