精神科病院における入院日数の減少

精神科に入院している人は国内に約28万人います。厚生労働省の2018年調査によれば、平均入院日数は266日で、1年以上が6割に上っています。先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の中でも、長さは突出しています。背景にあるのが、厚生労働省が1958年に出した職員配置の精神科特例です。一般病棟より医師数は3分の1、看護師・准看護師数は3分の2でよいとされ、報酬は低いが人件費も抑えられる長期入院患者を抱えることが、経営安定の近道になっていました。長期入院は医療費がかさみ、生活の質を重視した地域移行推進の観点からも望ましくありません。うつ病など気分障害の急増で、精神疾患患者が最近15年間で約6割増える中、厚生労働省も期間短縮に取り組んでいます。
わが国の精神医療において、近年、患者や障害者の生活の場を地域に移そうという動きの中で、旧来の長期療養型から脱却して、急性期の治療や退院促進に力を入れる病院が増えてきています。入院日数の減少とともに、空き病床率が増加してきています。入院病棟は病床の利用率9割が採算ラインといわれています。今は長期入院患者の高齢化が進んで死亡が増える一方、薬の進歩などで新規の入院患者が減っているため、2018年の精神科の病床利用率は86.1%まで下がっています。病床削減と入院期間の短縮は収入減に直結します。国は病院の自助努力に頼らず、診療報酬などで患者が地域で暮らせるような政策誘導を進めるべきです。

 

(2019年11月20日 毎日新聞)(吉村 やすのり)

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