厚生労働省の発表によれば、国内で2021年に結核との診断を受けた患者は1万1,519人で、人口10万人あたりの新規患者数を示す罹患率は9.2人でした。統計が残る1951年以来初めて10人を切り、世界保健機関(WHO)の分類で低蔓延国となりました。G7では最も遅い実現です。
国内で2021年に結核と診断され、死亡した人は1,844人です。明治から戦前にかけては、不治の病と恐れられ、最も死者が多かった1943年には17万人が亡くなっていました。しかし1980年代以降、長期の潜伏を経て発病する高齢の患者が目立つようになり、減少のスピードは落ちましたが、先進国が続々と低蔓延国になる一方、罹患率が高い水準が続いていました。
低蔓延国となったものの、現在も国内で年間1万人以上の人が結核と診断されています。2000年以降、85歳以上の患者の割合が増え、患者全体の30%を占めています。結核以外の持病もあり、90代以降の患者の54%、80代で38%が亡くなっています。若年者は薬で治るケースも多いのですが、隔離のために長期入院が必要なことは変わりありません。
国連のSDGs(持続可能な開発目標)は、2030年までに結核の流行を終息させることを目標に掲げています。WHOによれば、発症していない人も含め、世界の人口の約4分の1が既に結核に感染しており、毎年150万人が亡くなっています。患者の多くは低中所得国に暮らし、先進国では少なくなっています。2020年の人口10万人あたりの患者数は、フィリピンが539人、インドネシアが301人、中国が59人、韓国が49人などとなっています。
(2022年8月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)