給付型奨学金の拡大

返済不要の給付型奨学金の対象が、低所得層から中間層に広がります。文部科学省の有識者会議は、子どもが3人以上いる世帯を最重視するといった支援の優先順を柱とする制度案をまとめました。大学進学を後押しする狙いがあり、2024年度から始めます。
給付型奨学金は2017年度に創設されました。授業料減免と合わせ修学支援新制度と呼ばれ、2021年度は約32万人が利用しています。2022年度当初予算で約5,000億円を計上しています。両親と子2人の世帯の場合は、年収380万円未満を基準とし、年収に応じて3段階の支給水準を定めています。
政府が奨学金拡充に動く背景にあるのは学費の上昇です。2021年度の私立大学の授業料は、平均約93万円で、2011年度の約86万円から8.5%増加しています。値上げする国立大学も相次いでいます。一方で賃金は伸び悩んでおり、中間層でも大学進学に伴う家計への負担は重くなっています。僅かな年収の差で給付型の対象にならない世帯や学生が不利になり過ぎないように、貸与型の奨学金も含めて高等教育費にかかる制度全体の改善が必要です。

(2022年12月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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