線虫による検査は、自宅で尿を採取して送付すればがんのリスクの結果が届く簡便さで利用が広がっています。しかし、全身のがんを調べる尿検査は部位を確定できません。どの部位か全身を調べるためには、陽電子放出断層撮影装置(PET)とCTを組み合わせたPET/CT検査を利用することになります。
費用負担も大きく、高リスク判定を受けて同検査を受ける際は保険適用とならず、10万~20万円程度が全額自己負担です。簡易検査で高リスクと判定された人にとっては、身体的、精神的、金銭的負担は大きくなります。
線虫検査の根拠としている論文のエビデンスレベルは低く、がんでないのにがんと判定する偽陽性などの割合が正確に分かっていません。過剰な精密検査が増える恐れがあります。線虫検査も死亡率低下の根拠はなく、過剰診断と過剰治療が生じる可能性があります。無症状の人に対する検診はメリットとデメリットがあります。がんの簡易判定に潜むリスクを知って、検査を受けるかどうか判断することが大切です。
(2025年8月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)