国民生活センターによれば、美容医療に関する相談は2024年度には過去最多の1万737件となり、約10年で5倍に増えています。後遺症などの相談も倍増しています。専用の救急外来を設けて、美容クリニックと緊急時の連携を行う動きもありますが、自由診療の後遺症などの患者を受け入れる医療機関は多くありません。

美容医療は、保険適用がされない全額自己負担の自由診療です。美容医療で起きた合併症や後遺症の治療費も原則として保険適用されません。本来は施術した美容医療クリニックが責任を持つべきですが、患者が自由診療の費用を負担できない時、命を救うため保険診療で診るケースもあります。
厚生労働省の調査によれば、麻酔で施術する医師への研修がない美容クリニックは約6割を占めています。施術後の診察ルールがないケースも多く、3割超は後遺症などが起きた際に連携する医療機関はみられません。合併症による救急の受け入れ先を見つけるのは困難で、事前に連携する体制づくりが急務です。

医療技術は年々高度化していますが、それを体現する技量がある医師とそうでない医師の二極化が著しくなっています。今後、自由診療でも医師としての倫理観とスキルの両方を育てていく教育制度を、真剣に考える機会を増やす必要があります。SNSの情報に惑わされず、医師の診察経歴のほか、合併症や後遺症が起きた時の体制を確認すべきです。

(2025年12月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





