老衰の死亡率

 国がこのほど発表した人口動態統計によれば、老衰で亡くなる高齢者がこの10年で3倍に増えています。長寿化が一因ですが、死生観の変化も老衰急増の背景にあります。延命措置で生き永らえるよりも自然に枯れるように逝きたいと考える。年間130万人もの人が亡くなる多死社会を迎え、高齢者が増えています。老衰は加齢と関連するので、総人口に占める高齢者比率が高まれば老衰死亡率も当然高くなります。ただ人口構成比の変化の影響を統計的に除いても、老衰死亡率は右肩上がりです。
 以前は長く生きることが良しとされてきましたが、今は無理な延命よりも自然な死を受け入れる風潮があります。戦前は老衰死亡率は100人を超えていましたが、医学が進歩して診断可能な疾患が増えるにつれて老衰死亡率は減少してきました。1980年代以降は死亡率20人前後で横ばいを続けていましたが、2000年半ばに増加に転じ、2015年は67.9人に上ります。

(2016年6月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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