耳鳴り

耳鳴りとは実際に音が鳴っていないのに、耳の奥で鳴っているように感じることです。「ジージー」とか「キーン」などと表現される音が、自分だけに聞こえます。常時耳鳴りを感じていると、不安やイライラを覚え、不眠につながることもあります。国内で約300万人以上の患者がひどい耳鳴りに悩んでいます。また、耳鳴りで悩む患者の9割以上に難聴が見られます。
音は耳の穴を通って鼓膜を振動させます。耳小骨がその振動を増幅し、蝸牛という器官がその振動を電気信号に変換します。電気信号は聴神経を通り、脳で音として認識されます。この回路に何らかの障害が起きて、脳に信号が届きにくくなると、聞こえくい音域が生じて難聴の状態になります。脳は弱い信号を補うために、過度に感度を上げ、それが耳鳴りとして聞こえることになります。

耳鳴りを引き起こす難聴として多いのが加齢性難聴、突発性難聴とメニエール病です。突発性難聴は50歳以上に多く、ある日突然片方の耳がよく聞こえなくなります。メニエール病は女性に多くみられ、難聴のほか回転性のめまいが出ます。原因はいずれもはっきりと分かっていませんが、ストレスや疲労が引き金になります。
突発性難聴やメニエール病の場合はステロイド剤や利尿剤、ビタミン剤などによる薬物治療が中心になります。ストレスをなくし、安静にすることが症状の改善につながります。耳鳴りによる苦痛や生活上の不便さを減らすために、音響療法も有効です。音響治療器を使って耳鳴りに近い音を出し、脳を慣らす治療もあります。

(2019年4月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。