メンバーシップ型の雇用が中心だった日本では、配置転換による雇用維持が最優先とされてきましたが、アクサが世界16カ国・地域を対象に実施した2024年度の調査によれば、職場でのメンタルヘルス支援体制に対する従業員の評価は日本が最下位です。ジョブ型雇用では元の職務への復帰がままならない場合、解雇が許容されるかもしれません。
職場でのメンタルヘスルを守る上で参考になるのが、資格=賃金のジョブ型雇用が根付く欧州です。フランスでは、日本に近い形の労働医制度があります。医学部6年の後に専門教育4年が必要な高度資格で、企業内で強力な権限を持っています。労働医は、社内委員会で従業員のメンタル疾患への対応を主導し、傷病者に対しては労働医による就労可能性判定が義務付けられています。判定前の解雇は無効です。配転の勧告権も強く、従業員と企業の仲介役を果たしています。
復帰の際に従業員が一方的に不利な立場にならないよう、日本でも時代の変化に応じたきめ細やかな対応が急務です。産業医の知見向上はもちろん、主治医との連携促進が必要となります。

(2025年6月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)