男性の育児休業取得を促すための改革を盛り込んだ改正育児・介護休業法が成立しました。今回の法改正で、男性も子どもの出生後8週間以内に、計4週分の出生児育児休業(産休)を取れるようになります。企業には、対象社員に育休取得を働きかけるよう義務付けます。
法改正により男性が育休を取りやすくなると思うかと聞いたところ、まったく思わない、あまり思わないとの回答が55.4%で過半数を占めています。とても思う、やや思うは36.2%、分からないが8.4%でした。男性からは、法改正に加え、休業中の給与を100%保障を求める声が54.8%にみられ、育休取得に否定的な上司や同僚の意識改革が必要が41.2%、とする回答が多くあがっています。また、育休取得がキャリアに不利にならないという安心感が必要が40.1%と必要性を訴える声も多くみられます。
男性は、職場内の無理解を取得の壁と感じており、制度を利用しやすい職場環境が整わなければ、取得は進まないと考えています。男性育休の理想的な期間については、男性では1カ月~3カ月未満が23.3%で最多でした。日本は先進国中でも、男性の家事・育児参加が少なく、少子化の要因にも指摘されています。
家事・育児のために仕事を調整した経験があるかという質問に対し、大いにあると答えた女性は50.8%で、男性の16.8%を大きく上回っています。内容は、育休を取得が65.2%で最多、仕事を休んで学校行事に参加が63.6%、子どもの看病のために休暇取得や早退をしたが63.3%、時短勤務を選択が51.0%と続いています。また女性の21.6%が、家事や育児との両立のため、やりたい仕事を断・制限していると回答しています。
時短勤務や育休の長期化といった従来の制度拡充は、母親が家事・育児を担うという性別役割分業の考えを前提にしており、結果として女性の負担を助長させてしまっています。新型コロナウイルス禍が少子化を加速させています。歯止めをかけるためには、男女ともに子育てしやすい環境作りが欠かせません。法改正を機に、男性も女性も家事・育児の分担への意識を変えていく必要があります。
(2021年6月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)