育児休業給付の増加

労働者は法律に基づき、育児休業を最長2年まで取得できます。最初の半年間は休業する前の賃金の67%分、その後は50%分を雇用保険から給付して休業中の賃金を補填しており、父母ともに使えます。この日本の育休制度は、国際的に最も充実しています。ユニセフによると、給与と同等額をもらえる男性の育児休業の期間が先進41カ国で最も長くなっています。
政府は男性国家公務員が育休取得をしても不利にならない制度にする方針です。少子化対策白書によれば、子どものいない既婚男性の約6割は、育休を取得する意向があるとしています。キャリアへの悪影響が出ないとなれば、男性の育休取得は増えると思われます。
政府は国家公務員の男性職員に原則1カ月以上の育児休業の取得を促す方針です。民間企業にも波及させて、育休の取得率を高める狙いですが、休業中の賃金の補填が課題となっています。現行制度は雇用保険を使って給付する仕組みで、給付額は年5千億円を超してしまいます。2019年度には失業者を対象にした給付を上回ってしまいます。給付が増え続ければ、企業と労働者が負担する雇用保険料を上げざるを得ない状況になります。政府が重要政策に掲げる少子化対策の費用を労使が担い続けることに異論も出始めています。
厚生労働省によれば、2018年度の育児休業給付は5312億円で、前年度に比べ11%増えています。毎年10%前後伸びています。出産で退職する女性は減り、育児休業の取得が増えており、男性の取得が増えていけば、雇用保険の支出はさらに膨らむことになります。将来的に雇用保険で育休給付を負担し続けていくのが適正なのかとの指摘もあります。今後は一般財源を確保し、十分な財源を投じていくことが必要になると思われます。

(2019年10月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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