1993年に創設された外国人の技能実習制度は、政府方針と企業ニーズのズレを埋める形で運用されました。形式上は技能習得の目的で、多くの外国人材が期間限定で雇われました。それから30年たち、あらゆる業種で実習生は不可欠な存在となっています。人口減が進み、日本人の若者が採用できない現場は、外国人材に残って欲しいと考えています。政府は、現在は原則認めていない転職の要件を緩和するとしています。
新制度の育成就労とは、技能実習に代わる外国人労働者受け入れの新制度です。技能実習は、人づくりで途上国の成長に貢献するのを理念とした一方、新制度は国内向けの人材確保を制度目的に掲げています。育成就労は、人材の育成と確保を両立させるのが目的です。日本の技術力に裏打ちされた労働者を育てる機能を残しつつ、人権にも配慮しながら人材獲得につなげます。育成のために一定の転職制限は残します。
外国人労働者の転職を認める海外の国や地域は少なくありません。入管庁によると、英国には制限がなく、米国は市民・移民局の許可を得れば可能です。台湾やシンガポールは原則不可ですが、雇用主と本人の合意があれば認められます。日本の人手不足は深刻で、世界の人材獲得競争は激しくなっています。労働者の権利を保護する動きは国際的な潮流でもあります。
(2024年2月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)