肺がんの新しい治療

肺がんは、小細胞がん、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんの4タイプあり、これらのタイプや進行の程度などに応じて手術や放射線、薬物療法を使い分けます。初期には目立った症状がなく、手術が難しい状態で見つかる患者も少なくありません。転移・再発がんは薬物療法が中心で、従来の抗がん剤や、分子標的薬、免疫治療薬があります。
何らかの影響で遺伝子が傷つくと、細胞の表面や内部に異常なたんぱく質が作られます。このタンパクが増殖のきっかけとなる物質と結合することで、細胞は増え続け、がん化します。肺がんに関わるドライバー遺伝子の異常は、2000年以降相次いで見つかっています。肺がんのタイプで最も患者数が多い腺がんの7割に、こうした突然変異などの遺伝子異常が関係していることが分かっています。
分子標的薬は主に、異常なたんぱく質の働きを抑えます。がんを引き起こすドライバー遺伝子の異常は患者により異なります。適切な薬を選ぶには、原因となる遺伝子を特定することが大切になります。最近では、複数の遺伝子を同時に読み取り、約2週間で結果が分かるようになっています。分析に必要ながん組織の量は、3分の1以下で済みます。検査対象は、現在治療薬がある4つの遺伝子異常にとどまっています。今後、新しい薬が実用化されれば、対象を増やすことができます。分子標的薬の効果は数年持続する場合もありますが、がん細胞に別の遺伝子変異が起こると効きにくくなってしまいます。従来の抗がん剤を含めた複数の薬の組み合わせや、薬を使う順番など、治療効果を高めるための研究も進んでいます。

(2019年9月7日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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