終末期が近づき口から物を食べられなくなった場合、胃ろうを造設し、チューブなどで人工的に栄養を取り込むという選択肢があります。通常、鼻からチューブで栄養を送る経鼻栄養をして自宅療養をすることが多いのですが、経鼻栄養は違和感が生じやすく、患者が管を抜いてしまうこともあります。その点、胃ろうはチューブで胃に直接栄養を送り、経鼻栄養のような痛みや違和感が多くありません。1990年代から広まり、全日本病院協会の推計では2010年度に約26万人が利用しています。
寝たきりの患者が胃ろうにすれば、入院費だけで年数百万円かかります。安易な延命治療であるとの批判を背景に、胃ろう増設の報酬を約10万円から約6万円まで引き下げています。その結果2016年6月の増設数は3,827件と5年間で半減しています。胃ろうが減った分、経鼻栄養や、消化管が使えない場合に血管から栄養を送る中心静脈栄養を選ぶ患者が増えています。
病院は窒息や誤嚥を懸念し、人工栄養での延命を優先する傾向があります。食べることでリスクもありますが、人はいつかは亡くなるものです。最期まで食べたいものを食べ、穏やかに亡くなるのを望む人がいれば、その気持ちに応えることが大切です。
(2018年2月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)