脂質異常症の予防

2021年の日本の死因のうち、心筋梗塞などの心疾患は2位の14.9%、脳梗塞などの脳血管疾患は4位の7.3%で、計2割を超えています。動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを高めるため、動脈硬化を進行させる脂質異常症には十分な注意が必要です。
脂質異常症とは、血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)や中性脂肪が多すぎる、もしくはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が少なすぎる状態です。悪玉コレステロールが増えすぎると、血管の壁の中に入り込み、血管の壁が厚く硬くなる動脈硬化が進みます。一方、善玉コレステロールには、全身の余分なコレステロールを肝臓に回収する働きがあり、動脈硬化を抑制します。
中性脂肪が過剰になると、善玉コレステロールの働きを妨げてしまうほか、超悪玉コレステロールとも呼ばれる小型化LDLコレステロールを増やします。超悪玉コレステロールは、より血管の壁の中に入り込みやすく、動脈硬化が促進されてしまいます。血管が詰まりやすくなり、心筋梗塞などの発症リスクが高まります。中性脂肪は、コレステロールよりも食前後での値の変動が大きく、空腹時の中性脂肪が多い人は、いわばベースラインが高くなっている状態です。
脂質を減らすには食生活の改善が有効です。一番大事なのは全体のカロリーで、食べ過ぎに注意し、適正な体重まで下げて維持します。悪玉コレステロールが多い人では、脂肪の摂取量を減らし、中性脂肪が多い人は炭水化物を減らします。ウォーキングや水泳、サイクリングといった有酸素運動も有効です。ガイドラインは、1日計30分以上、週3回以上の有酸素運動を推奨しています。
食事で注意すべきは飽和脂肪酸で、肉のほか、牛乳やバター、ココナツ油、パーム油、菓子などでの摂取を減らすべきです。飽和脂肪酸を減らし、乳製品は低脂肪のものを選び、コレステロールが多い卵は毎日の摂取は控えるべきです。魚や食物繊維の摂取を増やすことも推奨されます。コレステロールを体外に排出させる食物繊維は、野菜、海藻、大豆製品、きのこのほか、ライ麦や大麦、オートミール、玄米などに多く含まれています。日本食はほぼバランスのとれた食事とされています。しかし、塩分が多いために血圧が上がり、動脈硬化につながりやすい点には注意が必要です。

 

(2022年12月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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