本能や感情をつかさどる脳の部位は、大脳辺縁系と呼ばれます。おでこの辺りにある前頭前野には、大脳辺縁系にブレーキをかけ、感情をコントロールする司令塔的な働きがあります。大脳辺縁系は、思春期に急激に成熟するのに対し、前頭前野が完全に機能するには25年以上かかるとされています。
前頭前野が未成熟な段階にある子どもの頃は、物事を感覚的に捉えてしまい、ネット情報の強い刺激に影響されやすくなります。親や教師、友人といった信頼できる存在が、前頭前野のようなブレーキ役となりますが、親子関係などに問題があると抑制が利きにくくなります。
思春期は、特に周囲の環境に影響されやすく、現実世界よりネット空間に居心地の良さを感じると、脳に快楽をもたらす報酬系と呼ばれる神経回路が活発化し、偏った情報ばかり集めたがるようになります。
脳は、シナプスと呼ばれる神経細胞同士のつなぎ目を介してネットワーク化されています。幼い子どものシナプスの数は大人の倍以上ありますが、脳の成熟とともに減っていき、学習した情報を効率良く引き出せるように再構築されます。
(2023年5月29日 読売新聞)
(吉村 やすのり)