脳動脈瘤は破裂すると、くも膜下出血を起こします。年間3万~4万人が発症し、3分の2が死亡するか、重い後遺症が残します。従来の治療法は、開頭して瘤の根元をクリップでとめる方法を用いていました。確実に破裂を防げますが、神経に傷がつくと後遺症の心配があります。脳ドックで動脈瘤がたまたま見つかった時、症状がないのに開頭手術に踏み切ることはなかなかできません。カテーテルを使って瘤にコイルを玉状に詰めるものは、脳の奥でも対応できる半面、再発の恐れがあります。
血管内に金属製の筒を入れて瘤を小さくする新たな治療法が開発されています。瘤が大きくて従来の方法では治療が難しい時、網目状の合金製のステント(筒)を瘤の近くの血管内に置く治療法です。細かい網目の筒が血管の壁となり、瘤への血流を減らします。足の付け根からカテーテル(管)を入れて筒を患部まで運ぶので頭を開く必要はありません。この新しい治療法は、これまで治療が難しかった首の内頸動脈にある10ミリ以上の大きな瘤が対象となります。昨年10月から保険適用になり、自己負担は10万~30万円程度です。しかし、瘤の中の血液が固まって小さくなるまで数カ月以上かかり、その間は破裂の危険性が残ります。
(2016年4月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)