脳卒中

 厚生労働省の人口動態調査によると、脳卒中は1951年から80年まで日本人の死因の第1位を占めていました。現在でも年間約114千人が亡くなっています。寝たきりになる最も多い原因です。脳卒中とは、脳の血管が詰まる脳梗塞のほか、血管が破れる脳出血、くも膜下出血の総称です。脳出血の最大のリスク要因は高血圧です。戦後しばらくは脳卒中のほとんどは脳出血でした。その後の減塩指導や集団検診の普及、高血圧治療薬の進歩などで70年代には急減しました。
 脳出血と脳梗塞の比率も70年代には逆転し、現在では脳梗塞が脳卒中全体の4分の3を占めています。脳梗塞のタイプも、高血圧に長期間さらされて細い動脈が詰まるラクナ梗塞は減り、太い動脈が詰まったり狭くなったりするアテローム血栓性梗塞の割合が高まってきています。食の欧米化で脂質異常症が増えたためで、心筋梗塞の増加と一致します。
 70年代にコンピューター断層撮影装置(CT)が登場し、脳出血はほぼ100%診断可能になりました。さらに脳梗塞の診断も磁気共鳴画像装置(MRI)の発達で精度が高まりました。脳梗塞では血栓溶解薬t‐PAが2005年に認可され、発症から4~5時間以内に使えば血流を再開できるようになっています。

(2016年1月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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