脳振盪は、衝撃により脳が揺さぶられ、脳内の神経繊維がねじれたり、伸びたりして、一時的に脳が停電したような状態です。意識を失うイメージが強いですが、症状は多様です。頭痛や吐き気などの症状のほか、感情的になったり、イライラしたりすることもあります。また、ぼーっとしたり、混乱したり、眠気がしたり、寝付けなかったりします。スポーツで頭を打ったら、本人が大丈夫と言ってもすぐにプレーから外し、専門医に診てもらうことが大切です。
急性硬膜下血腫など脳震盪より深刻な怪我に発展することもあります。衝撃で血管が破綻し、脳を包む硬膜の下に血がたまって脳が圧迫されます。スポーツで頭を打った時は、現場の指導者や保護者だけで判断せず、脳神経外科医など専門医に診てもらうことが大切です。
最近では、ボクシング以外にもアメリカンフットボールやレスリング、サッカーなどの選手が引退して数年から数十年後に脳の障害がみられることが分かってきました。慢性外傷性脳症と呼ばれ、うつなどの精神症状、記憶力の低下などの認知機能障害、ろれつが回らない、手の震えなどの運動障害がみられ、年月とともに症状が進むこともあります。
(2019年11月16日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)