腎機能が低下する慢性腎臓病(CKD)の患者は全国で推計1,330万人おり、透析を受けている人は約34万人もいます。透析患者においては、腎性貧血が起こります。
腎臓には造血ホルモンを出して、骨髄で赤血球がつくられるのを促す役割もあります。造血ホルモンが不足し、酸素を全身に運ぶ赤血球が十分つくられない状態になるのが腎性貧血で、疲れやすくなるなどQOLを下げ、悪化すれば腎臓だけでなく、心臓にも負担がかかってきます。
このような腎性貧血に新しい治療薬が登場しました。従来の薬がホルモンそのものを体内に入れて補うのに対し、この新薬は、人体の造血システムに働きかけるのが特徴で、造血ホルモンがつくられる仕組みや、酸素を運ぶ物質のもとになる鉄分の吸収を活発にする酵素である低酵素誘導因子(HIF)の分解を妨げます。貧血の改善が期待できるだけでなく、錠剤タイプの飲み薬であることも利点です。従来の造血ホルモン薬は注射だったので、貧血治療が必要な患者らは定期的な通院が必要でした。
(2020年9月16日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)