腫瘍循環器学とは

がん治療の進展で生存率が高まる一方、高齢化に伴って、心不全などの循環器病を合併する例が増えてきています。抗がん剤など循環器に悪影響を及ぼすがん治療も少なくありません。がんの治療と循環器病の予防や治療を並行し、健康状態をよりよく保つ腫瘍循環器学の取り組みが始まっています。近年、腫瘍循環器外来やがん心臓外来などを開設する病院が増えてきています。昨年は、循環器やがんの専門医らによる日本腫瘍循環器学会も発足しました。
背景には、がんの治療成績の向上があります。治療成績が悪い時代は救命第一で、心臓に悪影響がある抗がん剤でも大量投与せざるを得ませんでした。最近はがんになっても治る人や長生きする人が増え、循環器への副作用を減らす取り組みが重要になってきています。高齢化で循環器が衰えた患者が増えています。がん治療と並行して心臓や血管の状態に注意を払い、循環器に影響が見つかった場合は早めに治療することで、重症化を防ぐことができます。

(2019年10月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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