腎臓には、血液から老廃物を取り除き、体の水分量を調節する働きがあります。その働きが悪化した慢性腎臓病の人は、国内に約1,500万人と推計されています。腎臓に代わって血液をきれいにする透析を受けている人は、2023年末時点で約34万人に上っています。
透析には2種類あり、血液透析は、体の外へ血液を循環させ、装置で老廃物を取り除きます。体にたまった余分な水分も併せて除去します。週3回程度医療機関に通院し、1回の交換に4時間ほどかかります。
腹膜透析は、お腹の空間に透析液を流し込み、腹膜を通じて老廃物を取り除きます。お腹につけた管を使って、1日3回ほど、毎日自宅で透析液を交換します。1回の所要時間は30分ほどです。夜寝ている間に1日分まとめて透析する方法もあります。日本透析医学会によれば、国内では9割以上が血液透析で、腹膜透析の利用者は約3%しかいません。血液透析の方が先に普及したことや、腹膜透析は手がける医師が少ないことなども影響しています。
高齢化に伴い、自宅でできて体への負担が少ない腹膜透析を再評価する動きが出てきています。血液透析は、数日分の老廃物や余分な水分を一度に除去するため、効率は良いのですが、体への負担が大きくなります。腹膜透析は、効率はさほど良くないのですが、体液量や老廃物の量の変化が一定なため、体への負担が少ないとされています。今後は、高齢者が在宅で腹膜透析を選びやすくなるよう、在宅医療の担い手の育成や研修、行政との連携も必要となります。

(2025年5月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)